※こちらは2019年8月2日に別媒体にて掲載した記事です。当ブログの方が掲載に相応しいと判断したため、命日である本日再掲載いたしました。
去る2019年7月30日、17歳でこの世を去ったディープインパクト号のご冥福をお祈り申し上げます。
出典:netkeiba.com
思えばあっという間だった。
2005年、史上2頭目となる無敗の三冠馬として名を轟かせてから、一年余り。
2006年有馬記念で圧倒的な強さを見せながらも惜しまれつつ引退。
14戦12勝。わずか2年の競走馬生活。
しかし競馬ファンは今でも毎週のように名前を耳にする。
「空飛ぶ馬」と呼ばれた稀代の名馬は、種牡馬としても一流の成績を残した。
年間200頭以上の種付けをこなし、産駒約1700頭のGⅠ勝利数は50勝(37頭)。今週の出走産駒だけでも52頭だという(2019年8月1日現在)。
今年3月、首に痛みを訴え繁殖を休止。7月28日に患部の手術を受け、術後の容体は安定していたかに見えたが、そのまま馬房に戻ってくることはなかった。
今年3月までに種付けを終えた20頭が最後の産駒となる。
17歳。人間にして50代。
飛ぶように駆けた一生だった。
出典:netkeiba.com
競馬を見始めて20年(うちの実家はギャンブルにおいてのみ英才教育)あまりが経つが、正直言って私はあんまりディープのことは好きじゃなかった。
馬に限らず、優等生って鼻につくじゃないか。
GⅠで「またディープ産駒か」ってなるより、例えばオルフェーブルみたいなやんちゃな子とか、オグリキャップみたいなど根性馬とか、シルバーコレクターが悲願の戴冠ってほうが見ていて楽しい。
現代はいろんな人がいて、いろんな生き方があって、いろんな価値観がある。
地方競馬から中央に転厩してGⅠ獲るみたいなさ、まぁGⅠ獲らなくてもさ。最初からなんか持ってなくても与えられた環境で勝負して、自分らしい幸せを見つけるみたいなことに多くの人は憧れてると思うんだ。
だし、私は趣味でお話を作ったりするので、家柄もお金も環境も揃ってて成功する主人公の物語なんて誰が読みたいかい?とか思ったりする。笑
転落ならまだしも成功じゃあね。自分みたいな「持ってない側」からすると「あたりまえかよ!」って思っちゃう。
ただ、それでも人を惹きつけたのがディープ。
あんなに危なげない走りで勝つのはそう見ないし、GⅠの馬柱に産駒が出てなくてニュースになるのってディープくらいなんじゃないかな。
なにより後方差しの一気は痛快以外の何物でもなかった。武豊さんが「ディープの背中を知ってるのは自分だけ」って言ってたのが印象に残ってるな。それがジョッキーにとってはどれほど自慢だったか。
多分今週から馬柱見るたび、レース見るたびに「ああそうか、もうディープはこの世にいないのか」って思い出して、少ししんみりするんだろうなぁ。
好きじゃないけど、それくらい存在感の大きい馬だった、ディープインパクトは。
できるなら映像じゃなくて、この目で走りを見てみたかったなぁ。
馬場は無理でもせめて会いたかった…
年間200頭の繁殖って言うのは、未来に夢をつなぐという意味ではとても素晴らしいことだとは思います。一口4000万円といったら大変なことだし、その稼ぎでまた新しい名馬が育つわけだし、種牡馬として若い方が価値が上がるのもわかる。そりゃ一概に「ひどいよ~」とか言えないですよ。私心底競馬ファンですし、別に動物愛護にうるさい人ではないしね。
しかし繁殖中のけががもとになって闘病の末に安楽死というのは、なんだかとても残念な気がします。
競走馬の尊厳と、経済活動としての競馬、うまく落ち着ける場所をファンも一緒に探していけたらいいですね。
ディープ、ありがとう。
産駒で凱旋門賞勝てるといいね。
どうか安らかに…
出典:スポーツ報知